杉浦非水展

みどころ

日本で最初のグラフィックデザイナー、
全国初の巡回展

日本のモダンデザインのパイオニアとして知られる杉浦非水。全国で開催する巡回展は、今回が初めてです。

初期から晩年までの代表作が勢ぞろい！
非水を知る入門編にして決定版

ポスター、装丁、雑誌表紙、パッケージデザイン、図案集などの代表作はもちろん、彼の創作の背景を知るためのスケッチ、写真、遺愛の品々もご紹介。東京美術学校時代の作品から晩年のデザインまで、初公開を含む約300件で、非水の仕事をたどります。

今でも色褪せない、
普遍的なデザインの魅力

三越、カルピス、ヤマサ醤油･･･企業から絶大な信頼を得て、非水は人々の記憶に残る多くのデザインを生み出しました。写生に立脚したたしかな「線」や、ポップでカラフルな「色使い」など、非水の遺したデザインは今も色褪せることなく私たちを魅了します。

『非水創作図案集』（部分）1926年

章構成

第１章図案との出会い

元は東京美術学校（現・東京藝術大学）で日本画を学んでいた非水でしたが、黒田清輝がもたらしたアール・ヌーヴォー様式の装飾資料に魅せられて「図案家」としての道を歩み始めます。本章では、非水に影響を与えた黒田や友人らとの交流を紹介するほか、非水の活動の原点である若き日の足跡をたどります。

《⼤阪商船株式会社絵葉書》1902年頃三重県⽴美術館

中澤弘光《非水像》1901年東京国立近代美術館

《画帖〔島根時代〕》1904-05年

『富士山スケッチ』1907年

第２章図案の開拓者

「三越の非水か、非水の三越か」⎯⎯ 1908年に三越呉服店に入店、図案部主任として、1934年まで足かけ27年間にわたって、同店のポスター・ＰＲ誌表紙など様々なデザインを一手に担当しました。また、三越以外の企業デザインや多くの装丁・雑誌表紙なども手がけました。本章では、図案家としての地位を固めていく明治後期から大正期にかけての仕事を見ていきます。

《三越呉服店新館落成》1914年

『ツーリスト』第⼗⼋号　1916年

菊池幽芳著『百合⼦』上・中・下　1913年

徳富蘆花著（アーサー・ロイド、フォン・ファーロット、⼩野秀太郎英訳）『NATURE AND MAN 英訳⾃然と⼈⽣』、1913年（3版）／初版：同年、個⼈

第３章自然に学ぶ　写生と図案

「図案は自然の教導から出発して個性の匂ひに立脚せねばならぬ」（『非水の図案』巻頭言、1916年）と説いた非水は、独創的な図案は自然を真摯に見つめてこそ生まれるという信念を持ち、終生自然から学び取る態度を崩しませんでした。本章では、非水の創作活動の根幹ともいえる「写生」に注目します。近年注目を集める、非水が撮影した写真や無声フィルムも紹介します。

『⾮⽔百花譜』（昭和版） 1929-34年

『⾮⽔⼀般応⽤図案集』 1921年

《⾮⽔図案絵葉書》1915‐16年頃

《絵本》（『芸術写真選集』第⼀輯所収） 1923年

第４章非水が目指したもの、のこしたもの

1922年、46歳にして初めてヨーロッパの地を踏んだ非水の作風は、帰国後、それまでの和洋混交の優美なスタイルから、より明快で大胆、シャープなものへと新たに展開します。
また、デザインの価値と存在意義の向上を唱えるなど、教育者の立場へと移行していきました。
最後の章では、明治・大正・昭和という３つの時代を生きた、グラフィックデザインのパイオニアが何を目指し、何をのこそうとしたのかに迫ります。